石神井川にかかる橋「学校橋」を渡った丘の上に、明治9年創立の板橋区立上板橋小学校があります。その校歌の一節「花のトンネル水清き 石神井川を目の下に」という歌詞には、 昭和9年に石神井川に植樹された千本の桜がうたわれています。
この千本の桜は、上板橋村の人々が東宮(現在の上皇陛下)の降誕を記念して、栗原橋から現、板橋区立上板橋第一中学校付近、東武東上線の鉄橋のあたりまで植樹したものです。昭和9年4月に建立された記念の碑文から、東宮降誕を寿ぐこの植樹に、この地がいつか名勝となるようにという願いがこめられていたことがわかります。
この時に植樹された桜の木は、氾濫を防ぐ護岸工事のため昭和30年代から40年代にかけて全て伐採されていきました。現在は石神井川にかかる「桜橋」、あるいは「桜川」といった地名が当時の桜の記憶となって残っているばかりです。
現在の石神井川の桜並木は、この時の並木より下流に新たに植樹されたものですが、板橋の美しい風景「板橋十景」の一つとなっています。奇しくも桜を植えた当時の人々の思いは叶ったといえましょう。けれども、栗原橋からはじまったこの桜並木は現在残っておらず、わずかに板橋区立上板橋第一中学校付近に植えられた桜並木が当時の花のトンネルをしのばせる風景になっているのみです。
学校が終わると夕方まで子供たちは魚釣りや水泳、橋をめぐる冒険と川で戯れ、春になるとそれは見事な花のトンネルをそぞろ歩き、はげやま(茂呂山)でお花見をしました。昭和9年から昭和30年代まで石神井川を彩った桜色の「花のトンネル」は、この地域の人々にいまなお鮮やかに記憶されている歴史の一コマです。
「板橋十景」で有名な桜並木はこの千本桜とは異なり、図のように下流に植えられており、昭和9年植樹の千本桜の地帯には今なお校歌にうたわれている「花のトンネル」はありません。ソメイヨシノの寿命は約50年程といわれます。このプロジェクトでは、かつての千本桜の風景を次世代に伝え、未来の花のトンネルを創るプロジェクトです。
メンバー
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石神井川と桜の記憶 ― 弥生町
石神井川と桜の記憶 ― 桜川
2022年(令和4年)12月23日、石神井川の台橋の側にある東宮降誕記念植桜之碑前にて、富士桜の植桜式が執り行われました。植えられたのは富士桜という品種で、樹高が小さく小ぶりなことから豆桜とも呼ばれています。
同時期、石神井川そばの城北中央公園内に3本、台橋の側に1本のソメイヨシノが植樹されました。栗原橋は、昭和9年に植えられた千本桜のスタート地点でもありました。石神井川の千本桜を継承する第一歩の桜です。
石神井川花のトンネルプロジェクト、初めの第一歩は御嶽神社境内への桜の植樹です。植樹祭を斎行し舞姫という桜の樹木を二本、敬神講の皆様が植樹されました。すくすくと成長しますように。
植樹した日にち:2021年(令和3年)12月1日
植樹メンバー:木下 奉章さん、寶田 實さん、篠 義勝さん、谷岡 正治さん